2009年11月6日金曜日

筑波大学元教授の懲戒解雇処分に関する説明会

行ってきました。
もちろん内容はネットで髪型が話題になった長照二元教授のTBS報道に関して、報道に不正確な点があるということの説明。

Twitterでtsudaってたので、そのpostを見直して、まとめながら書きます。ハッシュタグは#chou_dismissal

・経緯など周辺説明
発覚は院生から。大学院生がM2で退学。理由は「不正な研究で学位を修得したくない」
その後、研究科での調査、予備調査、本調査が行われた。本調査では学外専門家2名を含んだ8名で調査。
予備調査で関係者から聴取とともに研究グループでやり取りされたメールとそれに添付された解析ファイルの膨大な分析。(数百から千ぐらいと言っていた)
長元教授には結論までに多くの弁明の機会があったが、結論として懲戒解雇、ということ。
ここら辺はたぶん、大体ネット出てる。
あと、長教授は学生に対して厳しかったみたいなこともちらっと出た。

長元教授の論文、PRL論文共著者27名のうち、長氏を含む3名を除く24名は論文の取り下げ、または削除を求めている。
PhysicsTodayなどの論文雑誌で長氏が反論をする、大学側からの反論が出る、というやりとりが何回か行われた。
で、こないだのTBSの報道が行われた。

・研究内容に関する説明
プラズマを電磁波で加熱することで乱流の抑制ができる、というのが論文の概要。その論文の図1と図3で不正な解析が行われた。キーワードはECH、X線測定、ELA

まず、図1について。疑いとしては、実験のデータをあらかじめ用意してあった曲線に合うように解析したのではないかということ。
院生の事情聴取ではELAからの生データは大きな誤差があり、その不定性を利用して曲線に一致するように電位を読み取ることが通例だった。
生データから平均化してグラフを作る際に不均一な平均化をしていた。つまり、あるグラフのポイントは10個の点の平均なのに対して、別のある点では15個の点の平均をしていたということ。
点のポイントを同じ数で平均化して取ってみると、全く違く、主張してるような曲線は描かない。

次に図3(i)について。ここでフーリエ変換からスペクトル図を作るところが問題。
積分するときにどこにゼロ点を取るのか、というオフセットの作業で不正。
で、その中で一番強調していたのが(スライドのタイトルが調査委員会への長氏の非常識な説明)、チャンネルごとに違う基準でオフセットを取っているということ。

そのあとにTBSの番組に対する反論
・長氏「学生がデータを消去したのを知りながら、100%の再現を求めた」
著者が生データを持っているのは当然。また、調査時点では院生のデータは消去されてなかった。
・別の実験データでほとんど同じグラフが書けた
あらかじめ用意された曲線に一致するように恣意的な解析をすれば再現されるのは当然であり、不正がなかったことの根拠にはならない。
・海外などの他の研究者から擁護の意見が出ている
出来上がった論文から不正を見出すのは不可能。大学側は調査報告書の英語版をHPに載せている。
・他の論文、Physics of Plasmasで掲載された
採用されたのは調査が始まった後で、自己保全のためである。しかも違ったデータを用いている。

・プラズマセンター長から研究不正防止に向けた対策について。
1.各グループで保存されていたデータをこれからは全データを収集して共通サーバーで保存。将来的には外部の共同研究者からのアクセスも可能にする。
2.外部発表審査委員会を新設して、外部に発表する際にはそこを通す。
3.副グループ、副指導教員制の導入。これまで縦の関係だったものに斜めの関係を加えていく。
4.センター実験会議を新設。これまでセンター長に権力が集中していたのを分散。

質疑応答
質問:解雇するにあたって労働基準法の違反があったのではないか
回答:懲戒解雇の予告手当について、長氏とは20日間ほどやりとりができなかった。

質問:インターネット上には長教授を擁護する側からの意見が多い。大学はそれに張り合うつもりはあるのか。
回答:大学が今、裁判という司法の場にいるときに場外乱闘したときにどう思われるのか。大学というもののあり方としてよくないのでは。(つまり、張り合うつもりはない)

質問:対策は息が詰まらないのか、また優先権についてはどうなるのか
回答:ある程度したら見直すかも知れない。データの信頼性を重視している。
またプライオリティについてはある程度の期間を設定する。それについては規則を整備するがまだである。

質問:その改善策で大丈夫なのか、解析プロセスを保存しておいて、要求されたら公開でいいのではないか
回答:研究者への信頼ということもあり、解析プロセスを保存することまでは考えていない。ただし、解析ツールについては保存する。

質問:現在のELA、X線のグループはどうなっているのか
回答:ELAのグループは今はない。X線のグループは別の先生が担当している。

質問:処分された講師3人はこのことを不正だと思っているのか
回答:1人はそう思っていない。2人は不正だったのかな、と思い始めている。

質問:アメリカの物理学会などにコミッティーを作ってもらって、そこでオーソライズしてもらったほうがいいのではないか
回答:裁判をやっている状況でそういうことをやるのはどうなのか。自分たちに不安があるように思われるのではないか。また、外部の人間を含めて処分を下したのでそういうことをやるつもりはない。

質問:筑波大学にとってよろしくない判決がでるかもしれない。その時にはマスコミによって筑波大学が傷つくのではないか。
回答:裁判では今回の説明会よりももっと詳しい資料を含めて説明している。我々が認められるのは当然だと思っている。

質問:他の実験関係の先生方はどう思っているのか。
回答:我々から見ると驚きとともに、ちょっと考えられない。

質問(自分):今回の説明会の内容はインターネットにアップロードする予定はあるか。
回答:ない。

質問:処分された講師が分野を変えたのは圧力があったのか
回答:こういう風にしてもらいたいとか(この部分はよく言ってることがわからなかった)

説明会終了。

終了後、アップロードすることについて尋ねたところ、「やる価値はある」という意見と「相手はそういう風にちょっかいを出して、大学を引きずり出すのが目的」という意見が。全体としては「プラスとマイナスの計算をしてから」だそうだ。大きいことなので本部あたりとも話し合って決めるよう。

以下、個人的な感想とか余談
これはデータ解析に問題があったんでねーの?というのが感想。
問題となっているのは解析方法が適切だったか、ってことだし。ただそれが即解雇か、って話だけど、強引にデータを解析して都合のいいように読み取るってのは、それはやっぱり科学ではないし、不正というものに敏感な現代では許されないでしょ。

まあ一番思ったのは、なんでこの説明会の内容をホームページに載せる気がないのかってこと。
ネット上には圧倒的に長教授を擁護する意見が多い。というかそれが真実のように語られてるし、陰謀論も出てる。
それにこの情報化社会の中で情報を流さないってどうよ。
「大学は場外乱闘の乗らない(キリッ」だっておwwwwwwwww
一応検討するようだから、もしかしたらそのうちここに書いた内容よりちゃんとした説明会の内容が出るかもね。できれば調査報告書も全部出してほしいんだけど。

まあ、お堅いというか官僚的というか…そんな感じです。

4 件のコメント:

  1. 国民の1人としては、すごく気になっている事件です。もしかすると、伏魔殿のような状況になっているのでしょうか?人を人とも思わない官僚的構造になっている可能性もあるのですかね?気になります。

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  2. たぶんそれはないですね。
    分野の違う実験物理の先生も「あんなデータの解析は信じられない」と言ってましたし。
    少なくともデータ解析の部分でまずいところがあったのは事実でしょう。
    ただ、それをきっかけに長氏を追い出そうと思ったか、というのはまた別問題ですね。

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  3. 俺は統計関係の人間だけども、
    違うデータを使ってもかなり綺麗にfittingしているのであれば
    再現性はあると思っていいね。
    重要なことは第三者が実験して同じような結果を出せるかどうかでしょうに。

    解析方法がまずい?同じデータを使わないで何度も同じような結果を出せることの方が重要なのになんで「不正」だと思うわけ?
    ばかじゃねーの?

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  4. きょうTBS でやっていましたが、他の学者も明らかに有意性があるって言ってるのになんで科学の素人の裁判所が判決出せるんだ?しかもこの教授は不正をしてるって言いふらしてる奴がいたって話じゃないか。
    きちんと精査しないで首にするなんて、とてもじゃないが科学者としてまともな思考してないだろ。それこそ流行に流されて嘘をホントと言いかねない。

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